2011年9月5日月曜日

【読書メモ】白人はイルカを食べてもOKで日本人はNGの本当の理由 (講談社プラスアルファ新書)


 この本は、東えりか氏の書評ブログで紹介されていた。氏はHONZ.JPのメンバーでもある。

 僕はダイビングをやるのでクジラを食べるという感覚に若干抵抗がある。どちらかというとクジラとかイルカは綺麗な海の象徴というイメージを持っているからだ。実際にクジラの竜田揚げを一度食べたことがあるがあまり美味しいと思わなかった。

 でも、クジラ漁を即刻やめよという動きについては抵抗を感じる。クジラ漁は日本の伝統であり、部外者(自分を含む)がどうこういう資格はない、というのが僕のスタンス。ということを踏まえて、本書を読んでみる。

 まず、本書の著者、吉岡氏は、中日新聞新宮支局長であるジャーナリスト。和歌山県太地町のイルカ漁を舞台に地元住民と、捕鯨に反対するシーシェパード、欧米の反捕鯨団体への取材、そして、後半は捕鯨国であるフェロー諸島への取材をしている。フェロー諸島での取材では同じ捕鯨国同士、でも対外的な対応の違いを明らかにする。ちなみに、イルカとクジラは大きさで区別しているだけで種類として明確な違いはないということを初めて知った。。。

 太地町へは過去に数回ほど串本町へダイビングに向かう途中に立ち寄ったことがある。確かにクジラの町という看板、見ました。だから僕にとっては親近感を感じる地域であります。

 この本を読んで、いろいろ考えさせられる内容だった。賛成、反対、どちらの意見もあって然るべき。ただ、この本で、映画「コーブ」の主人公を演じたオリバー氏とのやりとりを読む限りは、反対意見の理由がやはり科学的でないし、日本人の僕からすると、確かに欧米人の勝手な論理という点は感じなくもない。

 一方で、日本人としても、伝統あるイルカ漁をもう少し上手くアピールする方法を考える必要があるだろうと強く感じる。オリバー氏含め、反対派は一部メンバーによる網を破る等乱暴な実力行使があるが、総じて映画のメディアへの取り上げられ方、ネットの使い方など、アピールの方法が周到だ。

 また、水産庁や財団法人日本鯨類研究所顧問の大熊氏のインタビューは興味深い内容だった。特にクジラ漁と漁獲資源との関係について科学的説明をしてくれてる。人間とクジラは食べる魚が重なる部分もあるので定期的なクジラの「間引き」が必要であるということ。そうしないと人間が食べられる魚が減る。このあたりもう少し明確に世界にアピールできないのかなと強く感じる。


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